緑内障は眼球内の水圧(眼圧)が上昇して視神経が圧迫され死滅して視野狭窄を生じ最終的には失明につながる疾患であり、治療は眼圧を下げる点眼薬の処方が第一選択です。
薬物療法で不十分な場合や視野狭窄が進行してしまった場合は手術療法が選択されますが従来の手術では眼内出血など合併症が多く、術後の眼圧コントロールが困難なケースも多く存在しました。
そこで近年傷口が小さく患者さんの目への侵襲が少ない 極低侵襲緑内障手術 iStent が2019年に厚労省より認可されました。
白内障の手術を行った後に眼球内の水(房水)の出口の目詰まりしたフィルター部分(線維柱帯)に直径0.36ミリでチタン製穴あきの画鋲(iStent)を2個打ち込んで画鋲の穴から眼内の水を眼外に排出する手術であり、目薬1剤相当の眼圧降下作用が長期間持続します。iStent手術は早期から中期の緑内障患者さんが対象となります。術中に微量の眼内出血を生じるのみで合併症が少ないのが特徴です。
私の執刀した症例では従来の線維柱帯切開術(トラベクロトミー)に比べて明らかに術後の眼内出血(前房出血)が軽微で視機能回復が早く眼圧コントロールも良好です。ただし製品や治療法に対する講習を受け一定の経験と技術の習得が認められた医師のみしか執刀できません。
また白内障手術(水晶体再建術)と同時に行わないと保険適用になりませんのでiStent手術の機会は人生でワンチャンスのみとなります。(水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術)緑内障早期から中期にかけての観血的手術は劇的進歩を遂げました。ご興味のある方は緑内障末期になる前にかかりつけの先生とご相談ください。